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A.W.シェフ 「嗜癖する社会」

 

A.W.シェフについて:

Anne Wilson Schaef|1980年代の半ば以後、嗜癖の領域で活発な講演、著作活動を展開しているアメリカのセラピスト。「リビング・プロセス・ファシリテーション」という機関を運営して精神保健専門家の指導にあたっている。

 

日本では1987年に出版された本ですが、依存症について

わかりやすく解説してあります。

興味深い点を以下にいくつかピックアップします:

 

依存の種類には大きく

 

  1. Substance(物質)
  2. Process(行動)
  3. Relationship(関係)

 

があり、

 

Substance:お酒、薬物、食べ物など

Process:ギャンブル、自傷行為、ワーカホリック、買い物、お金をひたすら貯めるなど

Relationship:共依存など

 

となります。

 

中でも、「共依存」という関係性に関する依存はよく聞く言葉ですよね。

 

共依存という言葉は心理業界の業界用語のようなところから始まり、

それが自助グループなどを通して一般の方へも広まっていきました。

 

過度に相手を自分に頼らせようとすることも、

また過度に相手を頼ろうすることも共依存といえます。

 

自分を頼らせて離れられないようにしたり、

また、自分の面倒を見ざるを得ないようにして

相手をコントロールしようとしています。

 

「嫌いだけど一緒にいる」

「もう別れようと思っているのに、別れられない」

 

といった、行動と感情が相反しながらも一緒にいることも

特徴の一つです。

 

あらゆる嗜癖は、親などの存在に対する感情が

満たされなかった場合に登場します。

 

依存する人(嗜癖者)は、自分が無力な存在だと

無意識に感じており、自分の人生に対して責任を

持てないと思っているので、ひたすら救いを待ちます。

 

そして救いを待っている間にも、嗜癖は悪化していきます。

または、自分の無力感を認めたくないことから、人やものを

支配、コントロールしようとします。

 

嗜癖行為をしている間は自分と向き合わなくて済むため、

嗜癖者は自己中心的で、他人に気配りできなくなることが

多いです。

 

他人と自分の境目があいまいであり、白黒思考も特徴的です。

 

支配されることや、支配に従うことが愛情だと思っているので、

「自由にしていいよ」「自分で決めていいよ」と言われると

とまどってしまいます。

 

様々なことをコントロールしておかないと不安になって

しまうのですが、物でも人でも完全にコントロールすることは

不可能です。

 

そして「コントロールできない」という気持ちから、今度は

抑うつ感情が生まれます。

 

回復のためには

・嗜癖を認めること

・人生はコントロールできないものだと悟ること

から始まります。

気晴らしが気晴らしにならない人の思考パターン

うつや不安といった症状でカウンセリングにいらっしゃる方、
症状らしい症状はないけど何となく不調が続いているという方は、
「趣味や気晴らしをしてストレスを解消しましょう」という
アドバイスを何度となく見たり聞いたりしていると思います。
内容としては、
体を動かしてみる、
おいしいものを食べる、
好きなことをする、
音楽を聴く、
お茶を飲む、
散歩する…
などなど。
どれも、自分にとってストレス解消や気晴らしになるのであれば
良い方法です。
ただ、うつ傾向や不安の強い方の場合、
「◎◎(ストレス解消法)をやったのだから、早く回復しなくては」
と考えてしまい、ストレス解消のはずが余計なノルマが増えたような
気になり、ますます気が休まらないことがあるかも
しれません。
うつで休職する人が再休職しやすいのは、
「休んで迷惑をかけてしまったから頑張らなくては」
と自分を追い込んでしまうのに加え、休職中も
「早く回復しなくては」
と、気持ちのうえではまったく休めていないことが
あります。
この場合、気晴らしは気晴らしになるどころか、
かえってストレスとなってしまうかもしれませんよね。
気晴らしやストレス解消は、その行為自体を、他のことを
忘れて思いきり楽しむ!という気持ちや、ストレス解消に
活かす!という意思がないと効果があらわれにくいからです。
例えば、一般的に運動は体にも精神にもよいと言われていますが、
毎日運動をおこなっていてもうつになる人はいます。
それはただ習慣的におこなっているだけで、本人としては
運動がまともにストレス解消のネタになると思っていなかったり、
惰性で続けていたり、運動している間も悩みごとから頭を切り替えて
いなかったりするので、効果が出なくなってしまうわけです。
もくもくとランニングマシンで走りながらも、
(昨日の上司のあの一言が忘れられない…)
(明日もどうせ怒られるんだろうな…)
と考えていては、せっかくの運動も気晴らしにはならないでしょう。
マシンで走るときは自分の呼吸のリズムに意識を集中する。
少しずつ上がってくる体温や、じわりと浮かんでくる汗の心地よさを感じる。
少しきついけど、慣れてくるとだんだん足を交互に動かす
リズム運動が気持ちよくなってくる。
今日は、昨日より走行距離が少し伸びた気がする。
そういえば、ふくらはぎの筋肉も以前より厚くなった。
今日は関節の調子がいまいちだから、いつもと違う
穏やかな音楽を聴きながら、少しゆっくりめに走ってみよう。
自分の身体と対話をしながら「走る」という行為を
味わい、仕事や悩み事について束の間、考えることを
やめるのが、本当の気晴らしでありストレス解消です。
もし気晴らしが気晴らしになっていないと思ったら、
その気晴らしに集中しているか?ということを振り返って
みると良いかもしれません。
集中できていないのであれば、
自分に合った別の気晴らしを探してみたり、
その気晴らしをおこなっているときの身体の感覚に
意識を向けてみると、行為に集中できるようになる
かもしれません。

サッカー選手のうつ病について

少し古いニュースですが、現在ヴィッセル神戸でプレーしているアンドレス・イニエスタ選手が、うつ病にかかっていたことを告白していました。

(参照記事:『うつ病とサッカー イニエスタの場合』。名声も富もアスリートの強靭さも「鬱」を防げなかったhttps://news.yahoo.co.jp/byline/kimurahirotsugu/20181212-00106957/

イニエスタ選手が初めてうつについて語ったのは、2016年に発売された自伝でしたが、近年はテレビで数回、自分の経験を明らかにしたことでスペインでも話題になったようです。

これをきっかけに、「サッカー選手の3人に1人はうつ病にかかっている?」というような記事も目にするようになりました。

子供の頃の夢を体現し、富も名声も強靭な精神、肉体を持っていてもうつ病になる可能性があるというニュースは驚きをもって世間に受け止められた印象でした。

彼のうつ病体験は読んでいてもつらくなるもので、

 

・日々が楽しめなくなり、少しずつ自分が自分でなくなっていった

・周りの人が無関係な人に見え始めた

・感情を失い情熱を失って、内側から少しずつ空っぽになっていった

・家でも何かが起こるのではないかと、どきどきした

・錠剤を飲んで就寝できる時が唯一の楽しみだった

 

と語っています。

イニエスタ選手は専門家(心理カウンセラーや精神科医)の治療を受けることを強く勧めています。一人で苦しまないこと、また家族や友人を当てにしないことが大事だといいます。

イニエスタ選手には命の恩人と呼べるようなカウンセラーがいて、「カウンセリングが楽しみで、約束の15分前に着いていた」と振り返り、カウンセラーとの何でも話せる開放感と安心感は、いかに家族や親友であろうと得ることができなかったとのことです。

周囲に夢や勇気を与える立場だからこそ、なかなか弱音を吐いたり、心の闇を打ち明けたりすることができなかったのではないかと思います。そんな中、うつを告白するまでにはたくさんの葛藤があったのではないでしょうか。うつをカミングアウトすることによって、選手生命が終わるのではないかとの懸念もしていたそうです。

 

・常に強くあること、結果を出すことを求められこと。

・万全に体調とメンタルを整え、練習を積み重ねても、予期せぬできごと(けがなど)で実力が発揮できなかったりすること。

・うまくできなかった場合は容赦なくバッシングされること。

 

これらはサッカー選手ではない、一般的な生活を送る人でも経験することがあるのではないでしょうか。

ストレスがかかれば不安や焦り、無価値感、苛立ちなどのマイナスの感情がたまっていくのはごく自然なことです。

そのマイナスの感情を吐き出さずに我慢し続けたり、見ないふりをし続けると必ずどこかで不調をきたします。それは体調の悪化であったり、すぐれない気分が続いたり、周囲との関係が悪くなっていったり、さまざまな形であらわれます。

イニエスタ選手は、サッカー選手としての活躍以外でもたくさんの人を勇気づけたのではないでしょうか。

親の過干渉は、「あなたはダメな子」というメッセージになる

親としては、できるだけのことをしてあげたい、という気持ちがあるのかもしれません。

でも、それはあくまでも「親」がしたい行為であり、「子供」がしてほしい行為ではありません。

親の子供への過干渉は、「私はあなた(子供)の能力を信用していません」というメッセージになります。

アメリカの国立認定カウンセラー委員会(National Board for Certified Counselors)が発行している隔月刊誌のウェブサイト、Psychology Todayにこんな記事が載りました。(以下、ざっくりとした要訳です)

The New York Times broke the news of this years latest scandal: the college admissions fraud that has led to 50 indictments. The government called the investigation Operation Varsity Blues, and employed 200 agents nationwide. The murky tangle of bribes and fraud involved parents, coaches, college adminstrators, and the consultants paid to make it happen.

アメリカで、複数名による名門大学への不正入試が明るみになりました。子供の両親、コーチ、大学管理者、コンサルタントまで巻き込んだ大掛かりな賄賂と詐欺が横行していたようです。

Making use of the typical practices of elite universities, which frequently use lower academic standards for recruited athletes, coaches were able to request certain unqualified students in return for bribes. Photoshopped and falsified athletic records helped.

子供がアスリートの場合、成績が振るわなくても大学側のリクルートによって入学できるため、コーチは学力が合格基準に届かない生徒も、賄賂を受け取って入学させていたそうです。アスリートとしての成績も偽装したり、子供の写真をフォトショップで加工するといった行為も横行していたそう。

For $15,000-$75,000 per test, college exam administrators helped kids cheat on their entrance exams. Whether it was correcting their answers, feeding them answers, or letting someone else fraudulently take the test for them, this price bought good scores.

入試監督者は1万5000-7万5000ドルの賄賂を受け取り、子供の入試回答を正答に直したり、あらかじめ答えを教えたり、替え玉受験をさせていたそうです。

William Singer founded Edge College & Career Network, referred to as The Key, a college preparatory business through which he helped almost 800 families buy their kids’ way into top schools, typically without letting the kids know what was happening on their test scores.

塾経営者のWilliam Singer氏は約800の家族に対し、不正入試を勧めました。ほとんどの場合、子供たちは自分たちの成績が下駄を履かされていることを知らされてなかったそうです。

We live in a culture of intensive parenting that values a child’s comfort, self-esteem and success above all else, and holds the parents entirely responsible. Perhaps this is exactly what we can expect people to do in a culture like this. Yes, the price tag is astonishing. $1.2 million to get admitted to Yale makes little sense if you consider the expected return on investment. But that parent made sure to get their child what they believed they needed, even to the point of a criminal fraud.

アメリカ社会では子供がのびのびと自己肯定感を持ち、成功できるよう育てることが重視されますが、親の行き過ぎた干渉の結果、こういったことが起きるのは想定内だったかもしれません。例えば名門イェール大学に入学するには120万ドルかかりますが、この投資の見返りは期待薄であったとしても、子供にとって必要(と親が信じている)なものを与えるため、不正行為に及んでしまうことも辞さなくなってしまうのです。

Whether they saw it or not, these parents paid another price when they chose to do this: their child’s hope of confident independence. Does it serve this young adult to go to a school for which they are not matched, to struggle with an academic challenge for which they are not suited? Will their parent bribe their professors to make sure that they continue to have grades that are above their ability, all in the interest of self-esteem?

今回の不正行為は、高額な支出であるだけでなく子供の自信と主体性を奪います。子供の自尊心のために成績に下駄を履かせて良い大学に入れても、結果的に子供は自分の学力と見合わない環境で苦労することになるからです。

The responses on social media have been swift and insightful. One former Ivy League college professor who wished to remain anonymous wrote, “I love this college admissions scandal so much. What the hell kind of parents are these? “Listen, kid, you’re too dumb to get into a college we can brag about on your own, and physically speaking you’re frankly an embarrassment, so we’re gonna bribe some coaches and photo shop your head on to an acceptably athletic body. Love yoooooooooou!”… I can’t imagine how the kids in question feel about their parents lack of belief in them.”

SNS上では、アイビーリーグの教授が匿名のコメントで「今回の事件を起こした親たちは、子供に向かって『ねえ、あなたは私たちが自慢できるような大学に入るためにはバカすぎるし、はっきり言ってあなたは家族の恥なの。だから私たちはコーチに賄賂を送って、あなたの写真を加工しておくわね。これはあなたのためなのよ。愛してるわ!』というメッセージを送る結果となった。こんなことをされた子供たちはこれから一体どうやって親を信じていけばいいのだろう」と発言しました。

I can only imagine how these college kids are going to feel. Particularly the ones who were unaware of the way their applications were doctored. Their parents’ criminal actions send a very specific message: Sweetheart, you are just not good enough. We don’t believe in your abilities.

特に、親のやっていたことを知らなかった子たちの気持ちは想像を絶します。彼らの親がおこなった今回の犯罪行為は、まさに過干渉な親から子への、「あなたは能力不足だから信用できない」というメッセージなわけです。

This scandal is upsetting and unfair to everyone. It’s unfair to the kids who did not get a place that was rightfully theirs because of fraud. It’s unfair to the kids whose parents did this without their knowledge and now have to live with humiliation.

今回のスキャンダルは不正行為のせいで本来であれば入学することができた子供たちにとっても、不正行為をおこなった親の子供たちにとっても不公平な話です。親の不正行為を知らなかった子供たちは、今後ずっと屈辱を感じながら生きなくてはならないでしょう。

HSP(Highly Sensitive Person) とアダルトチルドレンの違い

心理学は日進月歩の分野で、新しい概念が次々誕生しています。

その中において、概念の意味が似ている言葉もたびたび登場します。

最近だと

HSP(Highly Sensitive Person)

という言葉がよく登場するように思います。

アダルトチルドレン(Adult Children)はもともとの意味は、親がアルコール依存症の家庭で育って成人した人のことで、
アメリカでアルコール依存症治療との関わりの中で生まれた言葉です。

この言葉がアメリカから輸入された当時、日本ではアメリカほどアルコール依存が問題になっていなかったこともあり、
精神科医の斎藤学によって、「機能不全家族で育った人」という意味に拡大されました。

のちに、「親による虐待や家族の不仲、感情抑圧などの見られる機能不全家族で育ち、生きづらさを抱えた人」
「機能不全家庭で育ったことにより、成人してもなおトラウマ(外傷体験)を持つ」という考え方、現象、または人を
さすようになります。

・家族システムの危機がある
・親との関係での何らかのトラウマがある
・過度に「いい子」でいることを余儀なくされた等の経験がある
・他者の期待に過剰に敏感になる
・自己のアイデンティティの不安定さやある種の「生きにくさ」を感じる
・PTSD (心的外傷ストレス性障害)に悩む

といった特徴が現在では挙げられます。

一方、HSP(Highly Sensitive Person)はアメリカの心理学者エレイン・N.アーロン博士が提唱した概念で、
「人一倍敏感な人」という意味ですが、その敏感さは人間関係において慎重であるためシャイだと思われやすい半面、
感性が豊かなので内的処理が優れているなど、ポジティブな意味でも使われることが多い言葉のようです。

アーロン博士のウェブサイトによると、下記の特徴が挙げられます。

・まぶしい光や、強い臭い、肌触りの悪い布、近くを通るサイレンの音といったものに容易に圧倒されてしまう。
・短時間に多くのことを抱えるとあわててしまう。
・暴力的な映画・テレビ番組を見ないようにしている。
・忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋、もしくは一人になって刺激をやわらげることができる場所に閉じこもりたくなる。
・生活する上で、動揺したり圧倒されるような状況を避けることを最優先にしている。
・デリケートで繊細な、香りや味・音・芸術作品がわかり、それを楽しんでいる。
・豊かで複雑な内面世界をもっている。
・子供のころ親や先生は、わたしのことを繊細あるいは内気だと思っていた。

http://hspjk.life.coocan.jp/

つまりHSPは心理面だけでなく、五感なども非常に繊細であることが特徴のようです。トラウマの有無に関しても言及されていませんね。

「機能不全家庭で育ったことによる生きづらさを抱えている自覚がある」という人は、アダルトチルドレンの概念に近いのではないかと思います。